「寛永通宝」が古銭の名称であることを知らないという人は少なく、聞き覚えがあると感じる人が大半でしょう。寛永通宝はよく知られている古銭で、香川県の観音市では、砂絵で作られた寛永通宝が観光スポットになっています。
寛永通宝は江戸時代を通して幕末まで流通していたため、残っている数も多く、本物を目にしたことがあるという人も少なくないでしょう。ただし、寛永通宝は流通期間が長かったこともあり、同じ「寛永通宝」という名称ながら異なる特徴を持つ「種類」が複数あります。
本記事では、それぞれの寛永通宝がもつ特徴を紹介し、寛永通宝を見つけたときに見分けがつくように、見分け方についても解説します。寛永通宝の種類によって価値が異なることも知っておきましょう。
寛永通宝の各種類の特徴を理解しておけば、古銭を通して、流通していた当時に想いを馳せることにも役立つはずです。
寛永通宝ってどんな貨幣?
寛永通宝は、江戸時代の寛永13年(1636年)に発行され、幕末まで鋳造されていた銭です。
寛永通宝の流通前は、中国で作られた銭が流通していましたが、質が一定でないため銭の価値が安定していませんでした。寛永通宝を発行して、銭の一本化を図ることで、貨幣価値が安定しました。
1文銭と4文銭が発行されていましたが、鋳造所が各地にあったため、種類は何百種類にも及ぶといわれています。ここでは寛永通宝について、解説します。
新寛永と古寛永の見分け方
寛永通宝は、大別すると新寛永通宝と古寛永通宝に分けられます。寛永年間に鋳造されたものが「古寛永」と呼ばれ、寛永年間より後の時代の寛永通宝は「新寛永」と呼ばれます。
新寛永と古寛永の見分け方はとても簡単です。寛永通宝に旧字で書かれている「寶(宝)」に注目します。「寶」の「貝」の下の部分が「ス」に見えるのが古寛永です。新寛永では「ハ」のように記されています。背面の文字や絵柄からも判別することも可能です。
寛永通宝は穴銭に分類される
寛永通宝はすべて「円形方孔」という形で、円形で四角い穴が中心にあいています。寛永通宝はじめ、江戸時代の銭には中心に正方形の穴があけられており、一般的に穴銭(あなせん)と呼ばれています。
江戸時代の銭は、製造過程で四角の串に銭を通して固定したうえで、周囲をやすりで磨いたために、四角い穴があけられていました。
寛永通宝の主な10個の種類・見分け方と価値
寛永通宝は大別すると新寛永と古寛永に分けられますが、細かい分類は何百とあります。製造されている場所や時代などによって種類が異なり、全種類の特徴を解説するのは難しいため、ここでは主な10種類について特徴や見分け方を解説します。
同じ「寛永通宝」と呼ばれる貨幣でも、異なる特徴があり、特に裏面のデザインの違いは顕著です。
1:文銭(ぶんせん)の見分け方と価値
寛永通宝と書かれている面の裏に「文」と書かれている寛永通宝は「文銭(ぶんせん)」とも呼ばれています。文銭は、寛文年代に鋳造された新寛永銭ですが、文銭にも種類があります。
文銭に分類されても、作られた年代によって品質や製造数が異なるのでさらに細かく分類され、現在の古銭市場で高値となるものもあります。文銭の買取に関する価値判断は、素人では見分けが難しいので、専門家の判断を仰ぎましょう。
2:浅草銭(あさくさせん)の見分け方と価値
浅草銭(あさくさせん)と呼ばれる寛永通宝は、浅草橋場で鋳造されたもので、古寛永銭の一種です。御蔵銭(おくらせん)とも呼ばれますが、明確に浅草銭とわかる文字や絵柄は刻まれていません。
浅草銭の見分け方は難しく、書体によっても価値が異なるので、価値を知るには専門家に鑑定してもらう必要があります。
3:二水永(にすいえい)の見分け方と価値
二水永(にすいえい)は、寛永通宝が正式な官銭となる前に水戸で鋳造された古寛永銭です。二水永の見分け方は明確で、寛永通宝の「永」の字が、「二」と「水」を組み合わせたような書体で刻まれています。
寛永通宝と刻まれている裏面の穴下に「三」の文字が刻まれているもののほか、鋳造された年代によっては、星の印や十三も刻まれています。買取価格は状態によっても異なりますが、数万円程度が一般的です。
4:水戸銭(みとせん)の見分け方と価値
水戸銭(みとせん)は、水戸で鋳造されていた古寛永銭です。水戸銭も種類が多く、水戸銭のなかには希少価値の高い種類もあります。水戸銭は、一目瞭然という特徴はありません。
寛永通宝の「通」のしんにょうの左端が四角い穴にぴったりとついており、しんにょうのはらいが美しいことや、「永」の字の中心線が傾いていることから水戸銭と判断できます。銭の裏面の縁が太めであることも特徴の1つです。
素人では価値判断が難しいので、専門家に判断してもらうようにしましょう。
5:芝銭(しばせん)の見分け方と価値
芝銭(しばせん)は、寛永通宝を鋳造するために、江戸幕府によって銭座が設置されて最初に鋳造された古寛永銭です。「通」のしんにょう部分や「永」の文字が草書体になっているものが多いという特徴があります。
芝銭の一般的な買取相場は低めですが、なかには約100倍の価値となるものもあるので、価値が低いと決めつけるのではなく、専門家に見てもらうことをおすすめします。
6:松本銭(まつもとせん)の見分け方と価値
松本銭(まつもとせん)は、長野県の松本あたりで鋳造されていた寛永通宝です。寛永通宝のなかでは鋳造数が少なく、博物館に展示されるほど希少価値があります。
価格相場は1万円前後とされており、「斜寶縮寶」という書体であれば、松本銭であるとされています。ただし過去には大量の偽物が造られたことがあるので、真贋の確認が必要です。
7:石ノ巻銭(いしのまきせん)の見分け方と価値
石ノ巻銭(いしのまきせん)は、現在の仙台、石ノ巻で鋳造された寛永通宝で、裏面の上部に「仙」の文字が刻まれているという特徴があります。石ノ巻銭は長い期間鋳造されており、多くの種類が出回っています。
石ノ巻銭の価値は、千円から1万円前後の間で幅があり、専門家に鑑定してもらわないと価値の判断ができません。
8:小梅銭(こうめせん)の見分け方と価値
小梅銭(こうめせん)は、本所小梅村というところで鋳造されていた寛永通宝です。本所小梅村は現在ではスカイツリーの建っているあたりにありました。小梅銭は裏面の上部に「小」という文字が刻まれています。
小梅銭に使われている書体は多いものの、ほかの寛永通宝に比べると買取価格は低めです。適正な相場を知りたい場合は、専門家に問い合わせることをおすすめします。
9:下野国足尾銭(しもつけのくにあしおせん)の見分け方と価値
下野国足尾銭(しもつけのくにあしおせん)は、裏面上部に「足」と刻まれていることが見分けの目印になります。困窮した足尾銅山を救済するために鋳造されたという寛永通宝で、サイズもバラつきがあります。
下野国足尾銭の評価は低く、数百円の値がつけば高い方ですが、サイズの大きなものは高評価になることもあります。低い評価だと決めつけず、まずは専門家に問い合わせてみましょう。
10:正字背文(せいじはいぶん)の見分け方と価値
正字背文(せいじはいぶん)は、裏面上部に「文」という文字が刻まれた、いわゆる文銭の一種です。文銭と呼ばれる寛永通宝のなかにも複数の種類が存在しますが、分類上の基本となる書体の文銭のみが正字背文と呼ばれます。
買取価格の相場は高くても数百円程度ですが、書体の種類によっては高額となることもあります。一般的には評価の低い寛永通宝ですが、最初から低価格と決めつけるのではなく、専門家に相談してみましょう。
プレミア古銭とされる寛永通宝
寛永通宝は、流通していた期間が長く、数も多いので、売却する際の値段もあまり高くありません。しかしながら、刻まれている文字や書体、銭自体の状態などによって、驚くほどのプレミアがつくものもあります。
ここでは、プレミア古銭とされている寛永通宝の種類を紹介します。寛永通宝をお持ちの方は、確認してみましょう。
島屋分(しまやぶん)の買取価格相場
島屋文は、裏面に「文」という文字が刻まれていますが、文銭とは比べられないほどのプレミア価値がつきます。文銭との違いは、「寛永通宝」の「通」右上の「マ」が「ユ」のように書かれています。
島屋文は数が少なく、滅多に発見されません。普通の状態のものでも10万円前後の値がつくといわれています。状態が良ければ20万円前後の値も期待でき、さらに未使用品では30万円前後の値がつくこともあります。
二水永(にすいえい)の買取価格相場
二水永は、寛永通宝が正式な官銭となるまえに発行された、いわば寛永通宝の元祖ともいえる種類です。1番古い寛永通宝ともいえます。二水永は、普通の状態でも1万円前後、未使用品なら5万円前後の値がつくと期待できます。
「寛永通宝」の「永」の文字が「二」と「水」を組み合わせたような書体の寛永通宝をお持ちの場合は、専門家に状態を鑑定してもらってみてはいかがでしょうか。
価値の高い寛永通宝を高値で買い取ってもらう7つのコツ
手元に価値のありそうな寛永通宝をお持ちで売却を考えている場合、できるだけ高値で取引したいと希望する方が多いでしょう。また高値を期待していたのに、期待はずれでに終わった経験があるという方もいらっしゃるでしょう。
寛永通宝のような古銭を売却するときは、いくつかのコツを踏まえて交渉することで、期待値に近い価格で買い取ってもらえる可能性が高くなります。ここでは、寛永通宝を高値で買い取ってもらうためのコツを7つ紹介します。
- 複数の業者に査定を依頼する
- 付属品と一緒に買取を依頼する
- 自分で綺麗にしようとしない
- 自己判断をせずまずは鑑定してもらう
- 専門知識が高い業者を選ぶ
- 売却を決めている場合はできるだけ早く買取してもらう
- 保管の際は専用ケースを利用する
1:複数の業者に査定を依頼する
寛永通宝には、一般的な相場というものが存在しますが、実際の買取価格は業者によって異なります。希少性の高い種類であれば、業者同士の競争となって、値が吊り上がる可能性もあります。「あそこの店では〇円だった」という情報を提示してみるのもおすすめです。
1業者、1店舗で査定してもらって売却先を決めるのではなく、複数業者に査定を依頼して、1番高値の業者を選択しましょう。
2:付属品と一緒に買取を依頼する
寛永通宝が手元にある場合、箱に入っていたり、鑑定書がついていたりすることもあります。これから鑑定してもらうから鑑定書は不要だろうとか、箱は邪魔になるだろうといった、自己判断はやめておきましょう。
鑑定書があることで鑑定時間が短縮されたり、箱があることで付加価値がついたりする可能性があります。箱や鑑定書以外の付属品でも、買取依頼の際は、一緒に買取を依頼しましょう。
3:自分で綺麗にしようとしない
汚れた古銭がでてきたら、綺麗に磨いて鑑定に出した方が、高値がつくだろうと考えるのは、間違っています。寛永通宝はじめ、古銭は素人が磨いてしまうと価値が下がってしまいます。古銭の価値は、古銭についたさびや汚れなどから歴史を感じる部分にもあります。
4:自己判断をせずまずは鑑定してもらう
寛永通宝の特徴や相場を確認し、自分の資産として期待しすぎるのは危険です。素人の自己判断は確実ではなく、期待していた金額で買い取ってもらえないこともあります。偽物の可能性さえあります。
自分の資産として正確な金額を把握したい場合は、きちんと専門家に鑑定してもらいましょう。相場は変動することもあるので、資産として確定させるなら、鑑定してもらったうえで、売却まで済ませておいた方が確実です。
5:専門知識が高い業者を選ぶ
寛永通宝は種類が多く、種類によって買取価格も大きく異なります。寛永通宝の種類は、製造年代や書体などの細かな判別ポイントによって分かれるため、特徴を熟知した業者に依頼したほうが正確に見極めてもらえます。
買取依頼の際は、寛永通宝についての専門知識がある買取業者を選びましょう。
6:売却を決めている場合はできるだけ早く買取してもらう
手元に寛永通宝があり売却を考えている、という方は、1日でも早く買取を依頼しましょう。寛永通宝のような古銭は、劣化しやすいため、少しでもよい状態で売却するためには、1日も早く査定してもらうのが得策です。
7:保管の際は専用ケースを利用する
寛永通宝をいずれは売却するつもりだが、しばらく手元に置いておきたいという方は、できるだけ現在の状態のまま保存できるよう、保存方法を工夫しましょう。
寛永通宝は、紫外線や酸化が大敵ですが、コインケースに保管しておくことで劣化を防げます。コインケースは100均でも入手できるので、寛永通宝を手元に置いておきたい場合は、利用するようにしましょう。
寛永通宝の種類と見分け方について知識を深めよう
寛永通宝の種類の多さと、いくつかの見分け方について、理解できたでしょうか。寛永通宝は、種類によって価値が大きく異なることもあり、また、見分け方は素人では難しいこともあります。
寛永通宝の種類と見分け方を理解し、知識として身につけておきましょう。実際に売却するときは、自分の見分け方に固執しすぎず、信頼できる専門家に査定や買取を依頼するようにしましょう。
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